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東京高等裁判所 平成4年(ラ)841号 決定

主文

本件執行抗告を棄却する。

抗告費用は抗告人の負担とする。

理由

一  本件抗告の趣旨は「原決定を取り消し、甲野一郎に対する売却を不許可とする裁判を求める。」というものであり、その理由は別紙記載のとおりであるが、その主張するところは要するに、「最低売却価額が目的不動産の客観的価値に比べて不当に低額であるから、最低売却価額の決定に重大な誤りがあるというべきである。よつて、本件売却許可決定の取消しを求める。」というものである。

二  そこで検討するに、本件記録によれば、原裁判所は、平成四年九月二日から同月九日までの期間入札における本件競売物件の最低売却価額を決定するに際し、不動産鑑定士乙山春夫に本件競売物件の補充評価を命じ、同評価人は、売却の実施経過、前回評価後の市場性の変動等を考慮して、本件競売物件の補充評価を行い、原裁判所は、右評価に基づき本件競売物件の最低売却価額を決定していることが認められ、右価額の決定は、同評価人による前回の平成二年七月の評価後の経済変動に基づき不動産の市場価格に著しい下落傾向が見られたこと、右平成二年七月の評価額は抗告人がさきに申し立てた執行抗告事件において、抗告裁判所により最低売却価額としては何ら不当に低額ではない旨の判断がなされていること(東京高等裁判所平成二年(ラ)第八一四号)、平成四年一月に実施された右評価額を最低売却価額とした期間入札においても適法な入札がなかつたこと等に照らして相当であり、重大な誤りがあつたとは認められないから、右主張は理由がないことが明らかである。

三  よつて、本件執行抗告は理由がないからこれを棄却し、抗告費用は抗告人に負担させることとし、主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 川上正俊 裁判官 谷沢忠弘 裁判官 今泉秀和)

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